画の悲み
国木田独歩

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)画《え》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)至極|温順《おとな》しく

[#]:入力者注
(例)にっこり[#「にっこり」に傍点]
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 画《え》を好かぬ小供《こども》は先《ま》ず少ないとしてその中《うち》にも自分は小供の時、何よりも画が好きであった。(と岡本某が語りだした)。
 好きこそ物の上手《じょうず》とやらで、自分も他の学課の中《うち》画では同級生の中自分に及ぶものがない。画と数学となら、憚《はばか》りながら誰《たれ》でも来いなんて、自分も大《おおい》に得意がっていたのである。しかし得意ということは多少競争を意味する。自分の画の好きなことは全く天性といっても可《よ》かろう、自分を独《ひとり》で置けば画ばかり書いていたものだ。
 独で画を書いているといえば至極|温順《おとな》しく聞えるが、そのくせ自分ほど腕白者《わんぱくもの》は同級生の中《うち》にないばかりか、校長が持て余して数々《しばしば》退校を以《もっ》て嚇《おど》したのでも全校第一ということが分る。
 全校第一腕白でも
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