れた薄《うす》い光《ひかり》が穩《おだや》かに落《お》ちて居《ゐ》る。これは面白《おもし》ろい、彼奴《きやつ》を寫《うつ》してやらうと、自分《じぶん》は其儘《そのまゝ》其處《そこ》に腰《こし》を下《おろ》して、志村《しむら》其人《そのひと》の寫生《しやせい》に取《と》りかゝつた。それでも感心《かんしん》なことには、畫板《ぐわばん》に向《むか》うと最早《もはや》志村《しむら》もいま/\しい奴《やつ》など思《おも》ふ心《こゝろ》は消《き》えて書《か》く方《はう》に全《まつた》く心《こゝろ》を奪《と》られてしまつた。
彼《かれ》は頭《かしら》を上《あ》げては水車《みづぐるま》を見《み》、又《また》畫板《ゑばん》に向《むか》ふ、そして折《を》り/\左《さ》も愉快《ゆくわい》らしい微笑《びせう》を頬《ほゝ》に浮《うか》べて居《ゐ》た彼《かれ》が微笑《びせう》する毎《ごと》に、自分《じぶん》も我知《われし》らず微笑《びせう》せざるを得《え》なかつた。
さうする中《うち》に、志村《しむら》は突然《とつぜん》起《た》ち上《あ》がつて、其拍子《そのひやうし》に自分《じぶん》の方《はう》を向《む》いた
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