+條」、第4水準2−93−74]《やまばえ》の尺にも近いのを差し上げて見せた。そして自慢そうに、うれしそうに笑った。
『上田、自慢するなッ』と一人の少年《こども》が叫んだ。
豊吉はつッと立ち上がって、上田と呼ばれた少年《こども》の方を向いて眉《まゆ》に皺《しわ》を寄せて目を細くしてまぶしそうに少年《こども》の顔を見た。そしてそのそばに往《い》った。
『どれ、今のをお見せなさい、』と豊吉は少年《こども》の顔を見ながら言ッた。
少年《こども》はいぶかしそうに豊吉を見て、不精無精《ふしょうぶしょう》に籠《かご》の口を豊吉の前に差し向けた。
『なるほど、なるほど。』豊吉はちょっと籠《かご》の中を見たばかりで、少年《こども》の顔をじっと見ながら『なるほど、なるほど』といって小首を傾けた。
少年《こども》は『大きいだろう!』と鋭く言い放ってひったくるように籠を取って、水の中に突き込んだ。そして水の底をじっと見て、もう傍《かたわ》らに人あるを忘れたようである。
豊吉はあきれてしまった。『どうしても阿兄《あにき》の子だ、面相《おもざし》のよく似ているばかりか、今の声は阿兄《あにき》にそっくりだ
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