に交《かわ》って此方《こちら》に来て、母は今、横浜の宅に居ますが、里子は両方を交《かわ》る/″\介抱して、二人《ふたり》の不幸をば一人《ひとり》で正直に解釈し、たゞ/\怨霊《おんりょう》の業《わざ》とのみ信じて、二人の胸の中《うち》の真《まこと》の苦悩《くるしみ》を全然《まるきり》知らないのです。
 僕は酒を飲むことを里子からも医師からも禁じられて居ます。けれども如何《どう》でしょう。此《こ》のような目に遇《あ》って居る僕がブランデイの隠飲《かくしの》みをやるのは、果《はたし》て無理でしょうか。
 今や僕の力は全く悪運の鬼に挫《ひし》がれて了いました。自殺の力もなく、自滅を待つほどの意久地《いくじ》のないものと成り果《はて》て居るのです。
 如何《どう》でしょう、以上ザッと話しました僕の今日までの生涯の経過を考がえて見て、僕の心持になって貰《もら》いたいものです。これが唯《た》だ源因結果の理法に過《すぎ》ないと数学の式に対するような冷かな心持で居《い》られるものでしょうか。生《うみ》の母は父の仇《あだ》です、最愛の妻は兄妹《きょうだい》です。これが冷かなる事実です。そして僕の運命です。
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