東洋人の發明
桑原隲藏
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)陀羅尼《ダラニ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)丁度|撥釣瓶《はねつるべ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
[#…]:返り点
(例)其聲如[#レ]雷、聞[#二]百里外[#一]
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この論文を讀む人は、拙稿「紙の歴史」「カーター氏著『支那に於ける印刷の起源』」[#底本にはここに「(いづれも本全集第二卷所收)」とある]及び拙著『蒲壽庚の事蹟』(本全集[#「桑原隲蔵全集」]第五卷所收)に載せた、支那に於ける羅針盤の使用に關する記事を參照ありたい。
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私は東洋人の發明と云ふ題で、一時間ばかりお話を致します。一體この協議會の趣意から申しまして、學問上のお話を致すよりも、教育上若くは教授上のお話を致す方が適當であることは、私も萬々承知して居りますが、聞く所では、二三日前已にこの席で、白鳥博士が中等教育の東洋歴史とか云ふお話があつたさうで、されば少し目先を變へて、學問に關係の有るお話を申す方が、却つて宜いかとも考へて、取敢へず昨日この題を極めた譯であります。暑い時分にむづかしい話は禁物と云ふことは、勿論承知致して居る。また僅か一時間で、六ヶ敷い話のしやうもありませぬ。其點は御安心下さい。
さて近頃のやうに、交通の便利が開けた時代は別として、交通の開けない不便な時代でも、矢張り東洋と西洋との間には、宗教上或は政治上・商業上の關係からして、相互の交通が開けて居つて、自然東洋の文化と、西洋の文化とが、互に影響して居ることは明白な事實であります。或る時には東洋の文化が西洋に影響したこともあり、又或る時には其反對に西洋の文化が東洋に影響したこともある。確か昨年の秋十月だと思ふが、『新日本』と云ふ雜誌が、東洋人と西洋人と、何方がより多く世界の文化發展に貢獻致して居るか、即ち何方が今日までの世界の文化發達に、より多く力を寄與して居るかといふ題を掲げて、所謂名士とか申す各方面の人々の解答を求めたことがありました。その雜誌にはこの問題について、種々の解答を掲げてありますが、併し此問題はさう
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