二大戰役の間に於て、大體我が國人の希望の如く改正せられ、朝鮮は明治四十三年八月に、わが國に併合された。建國以來我々の祖先が絶えず心に掛けて來た、國權の擁護又は擴張は、ここに完全に實現された譯で、祖先の神靈も定めて滿足を表して居るに相違ない。
尚又我々が國史を讀んで、神功皇后の御世や、豐太閤の時代に、我が國力の大陸に發展したことを想ふと、實に愉快に堪へぬが、此等の發展に幾十百倍した明治の御世の大發展を、我々の子孫が、遙か後世から如何に愉快に眺めるであらう乎。明治の發展は、ただに現代の我々のみに幸した許りでなく、我々の祖先もその慶に頼り、我々の子孫もその徳に浴する譯である。是の如く考へると、我々明治時代に遭逢した者は、實に開闢以來の果報者といはねばならぬ。
八
明治時代の發展に遭逢すべき幸運を持つた我々は、同時にこの折角の發展を挫折せしめざるべき、否一層之を助長せしむべき大責任を有することは申す迄もない。然もこの責任を果すことの容易でないことも亦自覺せねばならぬ。明治天皇御崩御後間もなく、英國の『タイムス』は、その紙上に、日本の新時代の困難といふ論文を掲載して、主
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