が隨分載せられて居り、中にはワクワクの位置が可なり曖昧となつて居る物もあるが、兔に角マホメット教徒の記録を通じて、ワクワクといふ國は黄金の多い神祕的な一種の寶の島の如く傳へられて居る。有名なアラビアの『千一夜物語』普通に『アラビアンナイツ』(Arabian Nights)と稱せらるる物語の中にも、ワクワク島のことが記載されてある。その『千一夜物語』の一部にシンドバード(〔Sindba^d〕)といふ人の海外探檢談がある。シンドバードは有名なハルン・アル・ラシッド(Harun al Rashid)といふマホメット教國の教皇の時代の西暦九世紀の初期の人で、一身代を作るべく國都のバクダードを後に、世界の寶の島のワクワクへ渡航せんとして、その途中で種々なる危險に遭遇した物語が、彼の海外探檢談の一部であるといふ。此種の物語の通例として、法螺もあり假託もあり、勿論その儘に事實として受取り難いが、そは兔に角この探檢談そのものが、マホメット教徒の間に、世界の東端に黄金を多量に産出するワクワクといふ土地があると、信ぜられて居つた一つの證據に供することが出來る。
日本はワクワクといふ稱呼で、唐のやや末期の
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