つた。我が遣唐大使が、從來何等縁故のない地方へ入港した爲め、福建の官憲から種々煩細なる取調べを受け、殊に市舶同樣の取扱を受けんとした。「爲[#二]大使[#一]與[#二]福州觀察使[#一]書」の中に、今囘の待遇が從前に比して苛酷なる點を述べて、不平の意を漏らしてあるが、かかる行違ひの結果で、誠に已を得ざる次第と申さねばならぬ。
我が大使一行の福建滯留は意外に長引いた。赤岸鎭到着後約三月に及ぶも、入國上京の許可に接せぬ。これには地方官憲から、事件を中央政府に報告して、その指揮を仰ぐ爲めに要する日數もあり、殊に當時生憎福建の觀察使が更迭中で、自然事務が遲滯する事情もあつた。大師はこの空しき滯留を非常に煩悶せられ、その「與[#二]福建州觀察使[#一]請[#二]入京[#一]啓」に、
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居諸《ツキヒ》不[#レ]駐、歳不[#二]我與[#一]。何得[#下]厚荷[#二]國家之憑[#一]、空擲[#中]如[#レ]矢之序[#上]。是故歎[#二]斯留滯[#一]。貪[#二]早達[#一レ]京(『性靈集』卷五)。
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と申述べて、熱心に入京求法の許可を催促されて居る。かく
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