を看板として居るけれど、その官制は法家の説に本づく所が多い。法家は人性を惡と豫斷して、之が警戒に重きを置く。法家の極意は、臣下同志をして相掣肘牽制せしめ、無力なる臣下をして、君權を脅かすことなからしむるに在る。法家の思想を繼承する支那歴代の官制は、官吏を信頼するよりも、むしろ官吏を猜疑すべく、官吏を利用するよりも、むしろ官吏を防弊すべく組織されて居る。例へば清朝の官制を一覽しても、官吏の非違を糾察する專門の都察院の外に、多くの官吏が彈劾權を賦與されて居る。かくて中央政府の大官に對して、地方長官が彈劾權を有し、地方長官の間に於て、總督は巡撫を、巡撫は總督を彈劾する權利を有してゐる。此の如く官吏をして相互に監視せしむる官制は、畢竟猜疑心の強い支那人の特質に相應せるものといはねばならぬ。
 支那の官場には※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]避といふ制度がある。地方官となるにも、その本籍所在地では就任が出來ぬ。中央官となるにも、その本籍地と直接の交渉多き官衙を避けねばならぬ。又親族關係の者は、同一官衙に奉職することが出來ぬ。科擧の場合にも、試驗官と親族の關係ある者は、その受驗を遠慮せなけ
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