本でも俘虜が七八萬も來ましたから、些《ちつ》とは蒙古人流を試みるのも宜いかも知れない(笑聲起る)。それからして蒙古人は酷いです。愈※[#二の字点、1−2−22]目的の城を陷れて此處で新たに俘虜が出來ますと前にこき使をした捕虜は皆殺して仕舞ひます。一體蒙古の兵は世界をあの通り征服しましたけれども、蒙古は今でも人口は少いから其時分でも多くはない。其時分戰爭へ出られる人は三十萬餘ですから、それを無暗に戰鬪線へ出して殺しては世界を征伐することが出來ない。だから先鋒へ俘虜を出して使役し、新たに捕虜が出來ると前の捕虜を殺す。それは屈竟な奴を殘して置くと謀叛を起す危險があり、さらばとて十分監督するには人數を要する譯ですから用がなくなれば敵人は皆殺して仕舞ひます。殺して仕舞へば監督の兵を置く必要がないから、それから其新たに取つた俘虜を又土木工事に使つて又更に俘虜が出來ると前に使つた俘虜を殺して仕舞ふ。
歐洲征伐の時蒙古兵はハンガリーを攻めたことがありますが、其時は秋の頃で四方を見ると五穀がよく實つて居る。それに住民は蒙古兵が來たと云うて山へ逃げたですから、是は困つたと云うて布令を出した。山へ逃げ込ん
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