それを捕虜にして、それから此次の城を討ちに行く時に使用します。何時でも蒙古人は何處かの城を討たうといふときは、先の一番近傍の城で捕虜にした奴を前列の先鋒に置くのです。向ふの奴は困る。自分の所へ敵が來た、そらと云うて一同武器をとつて見るとかねて昵懇の味方の奴が前列に出て來て憫れな風をして居るからどうしても城から十分材木を投たりする勇氣が鈍るです。蒙古兵は先鋒にはつい近傍で捕虜にした若い奴を使つて、前に申す通り※[#「石+駮」、第3水準1−89−16]を置く築山をこしらへるとか敵陣に接近しての土木工事、危險なことは皆捕虜にさす。蒙古人自身は危險少なき後方で先鋒の者は退却しては往けないなどいうて監督ばかりして危險な所へは寄りつかない。捕虜となつて働かされて居る奴は退却すると殺すと云ふので、何方にしても殺されるからまあ些《ちつ》とでも働いて活かして貰はうといふので働く。城の方を守つて居る人は愈※[#二の字点、1−2−22]困る。憎い蒙古人なら殺して見たいけれども、影も形も見えなくつて、一番危險な目前に居る奴は同國人とか隣りの城の親類みたやうな者ばかりでありまするから、非常に張合がない。だから日
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