子供の血を啜つたり肉を喰つたりした奴だ、此人間の血肉を餌食とする動物を食はないものがあるものかと云つて虱をすすめたといふことがあります。實際考へれば他の草を食つたり、詰らぬ物を食つて生活して居る動物でも可成り美味いから、人間の血とか肉より食はない虱の方が餘程美味いかも知れない(笑聲起る)。いろいろな物を食ふですが、食ふ時には無論手で掴むです。箸とか肉刺とかいふそんな贅澤な物はありませぬから手で掴む。濟めば構ひはしない靴などで手を拭ふです。さうでなければ何れ野天でありますので草がありますから草でも拭きます。
蒙古人は一體さきに申す通り極めて少量の食物しか取らぬのですから、食物に對しては非常に儉約するですから、お客樣に對しても百人位のお客さんを招んで置いて、唯一つの小豚か何かを一疋殺すです。それですからなかなか皆に渡らぬ位である。けれども蒙古人は極めて少く食つて、それで滿腹するのです。百人程のお客さんにそんな小さい獸類一疋位切つて、それだけでお仕舞ひです。日本人のやうに二皿も三皿も出たりなんぞする贅澤な御馳走は望むことが出來ない。それから切り取つた所の骨なども決して捨てない。骨などを捨る
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