などといふ贅澤なことはしない。自分に切つて貰つた骨があれば、必ず其骨は腰に下げて居る皮の袋の中へ入れて置く。空腹になつた時分にはそれを出して舐つて又入れて置く。幾度も舐つて終に木を噛んで居ると同じになれば始めて捨てる。決して宴會へ行つて骨があつたからと云つて其骨を遺して歸るといふそんな贅澤なことはしない。それを大切に保存しておき暇のあるとき出して舐る。なかなか食物に對しては儉約なものです。それで其ヨーロッパあたりから蒙古へ行つた人々、例へば前に言つたプラノ・カルピニとかルブルックといふ人々は蒙古にとつてお客樣ですから、勿論蒙古の政府から食料を渡して呉れる。けれどもそれだけでは中々不足勝で中には腹を減らして泣いて居つた人があります。初め呉れた折りに一度分の食物だらうと思つて一遍に食つて仕舞つた所が後から三度分だと聞いて大いに困つたのです。蒙古人は食量が少いから他國人も少いと思つて居る。餘り食物の少量なのは衞生に害があるやうですけれども、是れは戰爭に當つて非常に蒙古人の利益になることがあります。追撃などの場合には數日間殆ど絶食の有樣で敵を追窮することが出來ます。酒嚢飯袋などいふ無藝大食の者
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