れから表へ着る外套は外毛《そとげ》になつて居る。若し蒙古人の外套を着る人を切つて見たら身體の方に向つて毛があるし、外へ向つて毛がある。斯ういふのを二枚着るです。それでは何獸の毛皮を外套にするかと云ふと、狼、それから狐です。それが普通です。狐か狼の皮を外套にする。けれども貧乏人は大抵犬の皮を外套にするのであります。申す迄もなく是等の外套は所謂防寒衣でありまして家に居る時分には帳幕の中に住んで居る故にそんな物は脱いで仕舞ふ。それから蒙古人の男子はひげはありませぬ。全くないことはないけれども甚だ少い。隨つてひげを伸ばすことはありませぬ。若し伸ばしても鼻の下のひげだけ。けれども伸さぬ方が多い。伸ばす人は少い。鼻の下のひげは漢字で髭と書きます。鬚といふのは天神樣のやうなので、榎本さんのやうな耳の下へ伸ばすひげは髯と書きます。髯も鬚も蒙古人は生さぬ、生すのはここの髭だけです。まあ大抵日本の先生方も蒙古人と同じに鼻の下に髭を伸ばして居る(笑聲起る)。それから頭ですが、頭は是れは面白い。是れは未だ能く人が知らぬやうですが、蒙古人は辮髮です。その辮髮も一種特別なであります。この辮髮する人種といふものは現
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