ある。それ故帳幕中に入るときはこの皮の幕を押のけて行くのです。其入口の方向は前申す通り必ず南向きである。それは何故かと云ふと是れは蒙古人に限つた譯ではない。北狄は皆さうである。匈奴人でも突厥人でも囘※[#「糸+乞」、第3水準1−89−89]人でもさうである。若し南向きでなければ、屹度東向き、西と北の方には決して入口を設けない。何故と云へば蒙古地方で吹く雨風は大抵西の方向か北の方向に定つて居りますから、夫故に南と東へ開け置けば結構です。一體東か南の方であると云ふと日の照りやうも宜しくて温かいですからね。帳幕の中で各人の居場所といふものは定つて居ります(また圖を描く)。中央がさきに述べた通り火を焚く場所、其前が此處が入口、さうすると家の主人の居る所は屹度此處です。此處が主人の臥たり、腰掛けて居つたり坐つたり、總て居る所は此處です。即ち一番北の方で南へ向ひて居る。それから此方の方は一家の女供の居る所、此方は一家の男子の居る所、即ち右側西の方に男が居るし、左側東の方に女が居る。それで是れは人の起臥する帳幕の話でありますが、蒙古人だつて身分に應じていろいろの寶をもつて居る者もありますから、さうい
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