暦一三二四―一三二七)に、福建等處都轉運鹽使(正三品)といふ官――これは鹽鐵、酒醋等の專賣事業を統べ、兼ねて市舶のことを管理する大官である。――を占めた蒲居仁といふ人がある。或は蒲壽庚の孫にでも當るべき人かと想像される。
要するに蒲壽庚は元朝に忠勤を抽でて重用されたのみならず、彼の一族は元一代を通じて福建地方に大なる勢力を振つた。同時に隨分世間から嫌忌された樣である。『※[#「門<虫」、第3水準1−93−49]書』の卷一百五十二に、
[#ここから2字下げ]
元以[#二]〔蒲〕壽庚有[#一レ]功。官[#二]其諸子若孫[#一]。多至[#二]顯達[#一]。泉人避[#二]其薫炎[#一]者十(?)餘年。元亡廼|已《ヤム》。
[#ここで字下げ終わり]
とあるによつて、その大體を察知することが出來る。蒲壽庚が元に登庸されて以來元の滅亡に至るまで約九十年に及ぶ。『※[#「門<虫」、第3水準1−93−49]書』に泉人避[#二]其薫炎[#一]者十餘年とあるは、恐らく八十餘年の誤脱であらう。
かくて明の太祖が元に代つて天下を一統すると、漢族の國家再造を標幟とした彼太祖は、その返報に、この元と因縁深き福建
前へ
次へ
全30ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
桑原 隲蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング