ながら陽氣につくる。この唄は實に庖丁のリズムにあつてゐる。この昔からの唄も次第に忘れられてしまひさうだ。唐土の鳥とはなにを意味するのであらうか。餅なのでお腹の具合がわるくなつてゐる時、この粥は健康上にもいいわけだ。白粥の中に入つてゐる青菜は、青いもののない眞冬時であれば、更に新鮮で初々しい。
鳥追ひ
楮の殼を焚いて鳥追ひの唄を歌ふ行事は、十四日である。
總選擧などになると茨城縣の「西の内」紙が他府縣から夥しく注文される。「西の内」は楮の皮からつくる手すき[#「すき」に丸傍点]の和紙で、裂かうとしても破れぬ程強靱であるし、透しても裏から字が見えぬから、選擧用紙に適當なのであらう。
義公であつたか烈公であつたか、御殿女中が紙をそまつに取扱ふのを見て、紙すき女たちが、寒中川で紙すきをする辛さを見せた話は、たしか修身教科書にもあつたと思ふ。
その楮の皮を剥くのは子供達だ。楮の殼をためて鳥追ひの晩に焚くためである。十二月になると各家々では畑から楮を刈つて束にし、大釜にこしき[#「こしき」に丸傍点]を入れて蒸す。松薪をどんどん焚いて。
今日はどこ/\の楮むきだとなると
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