ふ空の高けれど

垂尾地《たりをち》に摺《す》る山禽《やまどり》の
出《い》で入《い》るあたり草枯れて
なづさふ野火《のび》の煙《けむり》のみ
動《うご》くと見えて日《ひ》は寂寞《しづか》に
  〜〜〜〜〜〜〜


  星夜


腰にからめる紅《くれなゐ》の
帶《しごき》は虹《にじ》に似たるかな
衿にほのめく白妙《しろたへ》は
谷につゝめる雪と見ん
  美《うつく》しき舞姫《まひひめ》よ

鳥は霞の天《そら》に舞ひ
蝶は花野《はなの》の地に迷《まよ》ふ
君《きみ》若草《わかくさ》を枕して
夢見《ゆめみ》る勿れ春の野に
  美しき舞姫よ

笄《かうがい》光《ひか》る黒髮は
解《ほど》かば風に亂れなむ
せめてはかくせ扇もて
月の影ある眉の跡《あと》
  美しき舞姫よ

星の夜、姉に伴《ともな》ひて
祇園《ぎをん》の町をさまよへば
櫻はちんぬ、しかれども
おさなかりけるうき人の
俤《おもかげ》に似《に》し君《きみ》を見《み》て
うらぶれわたるわれさへも
西の京の去りかねて


  やれだいこ
    (烏水の家に宿りて)


花なる人の
  こひしとて
月に泣いたは
  夢なるもの

たて綻
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