萱野《かやの》の末にうそぶきて
君はとがみを飛ばしけむ

ぬすめる芋を野に燒いて
※[#「酉+僉」、第4水準2−90−43]《ゑぐ》きに吻《くち》を腫《は》らしては
七日の月の影踏んで
小篠の笛も鳴らしゝか

おもかげに見る
  あげまきの
友と呼ばんは
  うらみなり
世にはぐれたる
  一人子の
君は悲しき
  弟よ

さもあれ空の
  雲すらも
やがては洞に
  歸るもの
歸れ月波《つくば》の
  ふところに
君ゆゑ泣かむ
  人もあり
[#ここから3字下げ]
はとがみ、草の名、形通草の實に似たり、みのりて莢裂くれば中におびたゞしき有毛痩果あり、試みに之を吹けば、風に乘り森を越え林を過りて、漂々として終にゆくところを知らず
[#ここで字下げ終わり]
  〜〜〜〜〜〜〜


  征矢の光
    『無弦弓』を讀む


鳥鳴き過ぐる
  巖の上に
黄金の弓を
  携へて
征矢の行方を
  見送れば
光はそれか
  入相の

西に聚まる
  紫の
霞の底に
  潛みては
白羽の影を
  中天に
漂ふ雲の
  縁《へり》に投げ

浪靜かなる
  大和田の
八重の潮路に
  煌めけば

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