痩せたる巖も馨るらん
橋《はし》反《そ》らせけむ高樓の
甍くづれしバビロンの
大城《おほき》の跡に咲き殘る
花の色こそさだかならね
珊瑚洋の島人も
花の環をつくりては
あからさまなる乳のしたに
錦の帶をまとひたり
ビヱンの湖の朝凪に
槎《うきゝ》あやつる美人の
腕《かひな》に佩べる珠鳴りて
匂へる花は胸の上に
咲きて散り、散りて咲く
野末の花のなつかしく
露にぬれたる秋の花を
渡殿朽ちし西の壺に
人の贈りし春の花を
蝦夷菊枯れたる池の畔に
褄紅の撫子は
露霜《つゆしも》降《お》りてめげたれど
名よ脆かりし虞美人草《ひなげし》の
やがて媚《いろ》ある花咲かん
眉秀でたる妹あらば
りぼんに※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》すを惜まねど
紫菫、白薔薇
酷《むご》くは摘まじ苑にして
新たに歸《とつ》ぐ町《いち》の子の
車に花は投ぐるとも
小|坪《つぼ》に吊《つる》す花籠に
切りてさゝんはあたらなり
明星が岳に立ち迷ふ
雲に思ひの馳する時
曉くらく園に降りて
幽かに花の香を※[#「鼻+嗅のつくり」、第4水準2−94−73]げば
深山
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