沙魚《てふざめ》追うて遡れば
川狹うして楡《にれ》の木を
驚き立つか嘴長く
羽翠なる水鳥の
浪湧き囘る瀧壺に
夕ばえさして虹立てば
瀧の面《おもて》にわが影の
紫金《しこん》の色と映るなり
紫菫匂ふ野の
胡蝶は花に醉ひしのみ
紀路《きぢ》に遍《あまね》き金風《あきかぜ》に
破《や》れし翼をかへさねど
醉へば手馴し横笛を
空知の月にしらべつゝ
さめては暗き夕張の
猿飛ぶ岳に咽ぶか
宗谷《きた》の岬に浪立てば
天鹽の雲も凍るらむ
五つの指の龜《かぢ》けては
棹執るにすら力無き
猿間《さるま》の海の水に鳴く
雎鳩の聲は聞かねども
小衾冴ゆる曉を
今は昔の夢戀し
歸らんか南海《ふるさと》に
歸れば峰に雪は無く
歸れば川に花流る
歸らんか紀《き》の海に
黒き狐の裘《かはごろも》
肩の紕《まよひ》は任他《さもあらばあれ》
下には離《か》れし憂人《うきひと》の
縫ひける衣《きぬ》を纏《まと》ひたり
雪まだ降らぬ石狩の
山にも野にも風吹きて
地《つち》に動くは雲の影
天《あめ》に映るは草の色
〜〜〜〜〜〜〜
天なる光
光は沖にあらはれて
闇は海より退《しぞ》きけり
星ま
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