。が、その背後にどんな計画があったか、それは君の想像にまかせる。
 防備隊というのは兵隊じゃない普通の地方人だ。青年団や、中学生だ。
「何をしていた!」夜中の二時頃、俺が集合場に馳せつけると、志願兵上りの少尉が見つけてガミガミ云う。「みな、一時に集まって、任務についているんですぞ!」
「一体、どういう状勢なんですか?」俺は、ワクワクしていた。
「そんなこと、訊ねなくッてよろしい! 命令通りすればいいんだ!」
 俺のあとから、七十人位やって来た。みな、銃と剣と弾薬を持った。そこで防備は、どこだと思う? 古城子の露天掘りだ! 石炭を掘っている苦力の番をするのだ。
「なに! 苦力の番だって! 馬鹿にしてやがら!」
 とおれはバカバカしくなった。
「そんな文句は云わんでもよろしい。黙って命令通りすればいいんだ!」やはり少尉はニガニガしげに答えた。
 君が撫順に来たとき、大きな電気ショベルが、ザクザクと石炭をトロッコにすいこんでいただろう。そして、炭塵《たんじん》で真黒けになった日給三十銭の運搬華工や、ハッパをかける苦力がウヨウヨしていたね。その苦力の番だよ。夜があけると苦力は俺たちの銃剣[#「
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