営の小豆飯を食い、二年兵になるのを待ち、それから帰休の日を待った者が、今は、幾人骨になっているか知れない。
ある者は戦場から直ぐ、ある者は繃帯所から、ある者は担架で病院までやってきて、而も、病院の入口で見込がないことを云い渡されて林へ運ばれて行った。中には、まだぬくい血が傷口から流れ出ている者があった。自分たちが、負傷から意識を失った、若し、それをまだ取りかえさないうちに見込がないと云い渡されていたら……。彼等は、それを思うとぞッとした。そういう者がないとは断言出来ないのだ。
「煙が上りだしたぞ。ウェヘヘッヘ。」
伍長が病的に笑って、湯呑みをチン/\叩きだした。
「やめろ!」
彼等は、髪や爪が焼ける悪臭を思い浮べた。雪に包まれた江の向うの林に薄い紫色の煙が上りだした。
「誰れやこしだったんだ?」
腰に弾丸がはまっている初田がきいた。
「六人じゃというこっちゃ。」
「六人?」
六人の兵士は、みな名前を知っていた。顔を知っていた。一緒に、あの朝、プラットフォームのない停車場から重い背嚢を背負って、やっと列車に這い上がり、イイシへ出かけたのだ。イイシにはメリケン兵がいない。ロシアの
前へ
次へ
全44ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング