の、誇るに足る、業績の一つとなるに違いない!
 俺の一生は、まだこれからだ。まだ/\これから、本当の仕事をやるんだ。人間は、三十代になっても、四十代になっても、なお、未来に期待をかけているものである。が、山崎は、この時、生涯に於て、今、本当の実の入った仕事をやっているのだ。未来ではない、現在だ! と感じた。
 陳長財は、射撃されたいきさつを説明した。それから、
「こんな暴虎馮河《ぼうこひょうが》の曲芸は、やめとく方が利口じゃないでがすか。」と、止めた。「今度ア、なかなか奴らの威勢がいいんですよ。」
「いや、俺れゃ、行くんだ。」と、山崎はきっぱり云った。「洋車を呼べ。奴らの威勢がよけりゃよい程こっちは、行ってたしかめてこなけゃならんじゃないか。」
「ズドンと一発やられたあとで、来なけゃよかったと、後悔したって、もう追っつかねえでがすよ。」
「分ってる!」
「わっしゃ、命がけでやる仕事であるからにゃ、ウンとこさ金がほしいなア。目くされ金じゃ、のっけから真平だ。」
「金は、いくらでも出すと云ってるじゃないか。うまく行きさえすりゃ。」
 山崎は、さっきから学生服に着かえていた。陳も学生服を着た
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