使ってる奴ですがね、滑稽な奴で、二時間もどっかでぐず/\してやがって……」
陳長財は、現在、山崎にとって、ごく必要な人物だった。彼は、もと、上海の碼頭《はとば》苦力《クリー》だったという話である。中津が、青島から帰りに、周村でつれてきて、呉れてよこした男だ。
中津は陳を呼んで、魚心があれば水心だ。それ相当のむくいをしてやる。が、俺れと、俺れの兄弟を裏切るような行為をしくさったくらいにゃ、生かしては置かないぞ。お前だけじゃない、お母アをも生かしちゃ置かないから、と数言を費した。
「こいつは昨日まで南軍の密偵をつとめたかと思うと、今日は、早や、こっちへ寝がえりを打つような奴なんだから[#「なんだから」は底本では「なんだからら」]。」と、中津は、山崎に注意した。「ちびり/\しか金をやらないのに限るんだ。前金でも渡したら、もう、手にとれなくなっちまうぞ。君が、しょっちゅう、こいつをキュウキュウさしとく必要があるんだ。」
それから、又、
「こいつの云うことを、まるきり信用してかゝっちゃ駄目だよ。――それゃ、云うまでもないこっちゃが、支那人は金にさえなると思ったら、どんなありそうなことでも
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