が奴等にむかって突ッかかって行くのを怖がって、先手を打ちやがったんだ! あいつらの利益を守るためには、あらゆるものを犠牲にしてかえりみないのだ!」
三人は、芝生の土手を越して、塹壕のある草ッ原に出た。大きなアカシヤのかげには火葬場が作られていた。
「俺れらだって、ひとつまちがえば、やられていたかもしれないんだ。」と、木谷は、塹壕をとび渡って小声で云った。「あいつらは俺らが怖いんだ。だが、今度、俺等が剣を持った日にゃ、先手を打たれやしないぞ。まず、あいつらの心臓を串ざしにしなきゃ置かないんだ!」
三三
[#地から2字上げ]――後記――
半分しか肉がついていない五名の兵士は、「名誉の戦死」ということになった。
棺に納められ、石油をぶっかけられた彼等の肉体は、火葬竈の中で、くさい煙となって消えて行った。
内地の彼等の親たちは、本当に、彼等が、憎むべきチャンコロの弾丸にあたって戦死したものと思いこんでいるだろう。しかし、兵士はそのためにすべてが将校に対する新しい憎悪を激しく燃やした。
出兵の結果、支那には、排日、反帝国主義運動が、かえって強くみなぎった。破壊しつくされた
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