たじゃなくってボーイやほかの野郎ですよ。」
「いや/\なか/\そうとばかりは行かないんだ、そうとばかりは……。」
支那人は、誰でも、一号か、二号か、三号か、どれかがなければ、一日だって過して行けなかった。そんな習慣をつけられていた。
督弁《トバン》でも、土豪劣紳でも、苦力《クリー》でも、乞食でも。一号、二号、三号……というのは阿片、ヘロイン、モルヒネなどの暗号だ。
拒毒運動者はそれと戦った。
その輸入は禁止されていた。その吸飲も禁止されていた。
彼等に云わすと、阿片戦争以来、各国の帝国主義が支那民族を絶滅しようとして、故意に、阿片を持ち込むのだ。それにおぼれしめるのだ。しかし、いくら禁止しても、その法令は行われなかった。網の目をくゞる。
没収されても罰金をとられても、又別の方法で持って来る。メリケン粉の中へしのびこましたり、外の薬品にまぎれ込ましたり、一人、一人の腹に巻きつけたり。どうにも、こうにも防ぎきれなかった。山崎はそれを知っていた。
若し、内川が持って来なくっても、それは、ほかの誰れかゞ持って来るのにきまっていた。
若し、日本人が持って来なくっても、独逸人か、ほ
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