は、殆んど何も考えるひまもなしに、たゞ陳に何か云って、廊下へ出た。十秒間に、十五間ほどを、曲り角まで足が宙をとんでやってきた。そこで彼は立止った。陳は、出てくる気配がなかった。
山崎は、支那人に追っかけられる。と、予期しつゝ、なお、しばらく、様子をうかゞった。陳は、親しげに、おかしそうに笑いながら、とうとう出て来た。つゞいて、支那人が、どや/\と崩れ出て来た。彼は、ハッとした。どっかで爆音が起った。
五秒の後、それは、武器を積んだトラックが、校庭に着いたのだと知れた。
焚火にあたっていた者どもや、部屋にいた連中が、車からおろされる武器をかつぎこんだ。
陳と山崎は、暗い夜露のおりた芝生の上に立ってそれを見ていた。タフトらしい、せいの高い、鼻筋の通った、アメリカ人が支那語を使って何か指図をしていた。
武器は大型のトラックに、一ぱい積込んできていた。
「おい、おい、張り番はもういゝ。大丈夫だ。お前らも来て手伝ってくれ。」
ふと、鼻の高い男が、学生服の二人を見つけて声をかけた。
「はい。」
咄嗟に、気軽く陳はとび出て行った。
その恰好を、山崎はおかしく、くつ/\笑いながら、自分
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