は、人間が国家の立場で物を見ずに、人類の立場から物を見ることである。他国の文明をはなれては自国の文明が真の意味では存在出来ないというのが人類の意志である。人々は、人類の意志を尊重することを知らないからいかんのだ。人類の意志を無視する所から戦争は起る。国家主義が人類の意志に背く所に戦争は起る。これが「或る青年の夢」を貫く中心思想である。すべてが人類である。人類は、万物の霊長でほかの動物とは、種を異にする特別のものゝようである。
三
ブルジョアジーは、眼前の悲惨や恐怖から戦争に反対はしても、決して徹底的に戦争を絶滅することは考えてはいない。若し考えてもそれは生ぬるい中途半ぱなものであって、結局に於ては反動的な役割をしかなさない。理想主義か或は現状維持の平和主義である。そこで、ブルジョアジーは戦争反対の文学に於ても、明かに、その階級性を曝露している。
欧洲近代文学に於ても、戦争に反対しているものは、なかなかの数に上る。大体、その名前だけを挙げて、プロレタリアートの反戦文学に移りたい。
ジャン・ジャック・ルソオ――「恒久平和の企図」
エミイル・ヴェルハアレン――「黎明」
前へ
次へ
全29ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング