「裡に」]剥がれて今度は誰彼の差別を無くする××を着せられる。
君は悲惨と屈辱と、日々に陥って行く萎縮との生活を生活する。粗食を与えられ、虐待され、身体中こづき廻され、番兵の命令によってこき使われる。一瞬毎に、君は萎縮した自己の内へ激しく投げ返される。君は極めて些細な行為のために罰せられる。又、主人の命令で生命を棄てる。」
こういう不愉快な、恐ろしい戦争が、而も××××制度が存在する限り、一遍すんでも又「起るであろう。戦争が戦闘する者以外の人間によって決定せられ得る限り、それは繰りかえし起されるであろう。銃剣を鍛えそれを振り廻したりする魯鈍な大衆以外の人間によって戦争が決定せられ得る限り、それは何遍も繰りかえし起されるであろう。」そうして××××制度が存続する限り、「この地上には、戦争の準備以外に何物も無くなるであろう。あらゆる人間の力は、そのために吸収され、あらゆる発見、あらゆる科学、あらゆる想像はそれによって独占されるだろう。」――「クラルテ」にはこういうことが叫ばれている。そして、「クラルテ」が発表されて十年を経過した今日、世界の帝国主義国家は××の準備以外、何物をもしていない状勢になっているのである。
マルセル・マルチネは、大戦を背景にして三ツの作品を書いている。戦場に行こうとする兵士達に呼びかけた詩集「呪われた時」と、戦争の後方で呻いている民衆の悲惨な生活をかいた小説、「避難舎」と、それからドイツ革命に暗示されて書いた戯曲「夜」である。就中、そのいくつかの詩と、戯曲とは非常にすぐれたものである。恐らく、今日まで日本語に訳されたプロレタリア文学の中で、最もすぐれたものゝ一ツであろう。
資本主義制度が存続する限り戦争の準備が絶えない。又、戦争も絶えない。吾々は××××戦争には絶対反対である。しかし、戦争が絶滅するのは、最も多く圧迫された最後の階級であるプロレタリアートが、自ら解放されながら、全人類をも一般に階級制度から解放した時でなければならない。そこに達するまでには、×××戦争を経なければならぬ。プロレタリアートは、××××戦争には反対するが、××××は肯定する。マルチネは、「夜」に於て、××××戦争には反対しているが、虐げられ、搾取された無産階級が団結して遂行する××××は、これを肯定しているのである。「夜」は無産階級をして、冷かな熱性を覚えさし、
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