達だからだ。何処へ行っても君達だけが不滅な力と、私心を交えない朗らかな良心とを持った君達だけがこれをやり得るのだ。君達は、君達自身のために戦争をやるようなことはないのだ。
 君達は、大昔の魔法や、神の殿堂などを怖れてはならない。君達の巨然たる理性は、信者達の富の根を止める偶像を破壊しなければならない。」
「世界的共和は、この人生に於て、万人の権利を平等たらしめるための避くべからざる結果なのだ。平等の観念に立脚して進むならば人民のインタナショナルに到達するであろう。若しも其処へ到達しないならば、それは正しい道理に立脚していないからなのだ。」
 こういう風に、バルビュスはインタナショナルを叫んでいる。
 プロレタリアートは、帝国主義的、侵略的××に対して絶対に反対する。従って、プロレタリアートの反戦文学には、それが表現されなければならない。ブルジョアは、戦争の真の原因を民衆の眼から隠蔽する。「彼等は、人民に向って云う、――一旦、お前達の上にいる人々の思う通りの勝利が得られた暁には、あらゆる暴政は魔術にかかったように影を消してしまって、地上に平和が来るのだ。――と、それは、ほんとではない。××による支配が来るまでは、地上に平和は来ないのだ。」それから彼は、他の箇所で全世界の兵卒に向って云う。「人間の群の中から出鱈目に掴まえられた男よ、記憶するがいい。――君が君自身であったことは片時もなかったのだということを! 『ねばならん! ねばならん!』という冷酷な絶対命令の下に君が屈服しないですんだことは断じてなかったのだ。平時には、商工業の機械工場で、不断の労働の規則に取り囲まれ、道具の奴隷となり、ペンの奴隷となり、才能の奴隷となり、又は、何か他の物の奴隷となって、朝から晩まで休息することもなく日々の労役に曳きずられる君よ。それによって、君はやっと生活を凌いで夢の裡に安息することだけは出来た。
 君が決して欲しなかったこの戦争が来ると――君の国や名は問う要がない――君をしかと握っていた怖しい運命は、きっぱりその仮面を脱ぎ捨てゝ、喧嘩好きな複雑な正体を現わしたのだ。宣告の風が起ったのだ。
 君の身体は徴発される。刑法上の逮捕と同じような威嚇の方法で君を捕える。如何に貧窮なものも、誰一人としてこの逮捕から逃げることは出来ない。君は営舎の中に××される、虫の如く裸に[#「裸に」は底本では
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