公会堂に様子をさぐりに、ぴょん/\はねとんで行った。
「おい、のんでるぞ、のんでるぞ!」
踏みつけられたような笑い方をしながら七五郎は引っかえして来た。
「何《な》に、のんでる?」
「役員どもがより集って、検査官をかこんでのんでるぞ。」
「まだ、選鉱場も熔鉱炉も検査はすまねえんだぜ。」
「それでものんでる。のんでる。」
「チェッ! 酒で追いかえそうとしとるんだな。くそたれめが!」
三時半に、阿見が公会堂からやって来た。睫毛の濃い眼が、酒で紅くなっていた。
「おーい、もう帰ったから、えゝぞ、えゝぞ。」彼は、板橋を渡ると、ずるげな、同時に嬉しげな笑い方をして、遠くから、声をかけた。
「くそッ! じゃ、もう検査はないんかい?」
「すんじゃったんだ。」
「見まわりにも来ずに、どうしてすんだんだい?」
「略図を見て、すましちゃったんだ。馬鹿野郎!」
「畜生!」
坑夫等は、しばらく、そこに茫然と立っていた。
川下の、橋の上を、五六台の屋根のあるトロッコが、検査官や、役員をのせてくだって行くのが、坑口から見えた。トロッコは、山を下ることが愉快であるかのように、するすると流れるように線路を、辷
前へ
次へ
全38ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング