然だった。祖母や、母は、まだ、ケージを取りつけなかった頃、重い、鉱石を背負って、三百尺も四百尺も下から、丸太に段を刻みつけた梯子を這い上っていた。三百尺の梯子を、身体一ツで登って行くのでさえ容易でない。それを、彼女等は、背に重い鉱石を背負っていた。彼女等は鉱石のために背をうしろへ強く引きつけられた。手と足とがひどく疲れた。我慢をした上に我慢をして登った。が、もう、梯子が三ツか四ツというところまで漕ぎつけて、我慢がしきれなくなって、足を踏みはずしたり、手に身体を支える力がなくなったりして、墜落した。上の者は、下から来ている者の頭に落ちかゝった。と、下の者は、それに引きずられて二人が共に落ちだした。その下に来ている者が又引きずられた。落ちながら、彼女達は坑内に凸凹している岩に、ぶつかった。坑底に落ちてしまうまでには尖った岩に、乳や、腕や、腰や、腹が××られたり、もがれたりした。そして、こなみじんになってしまった。どれが、誰れの手か、どれが、誰の足か、頭か、つぎ合すのに困るようにバラ/\になってしまった。――そんなことが幾度あったか知れない。それは、昔から検査官に内所にしてあった。彼の祖父は
前へ 次へ
全38ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング