な家畜を利用することを忘れなかった。ほかで儲からなくなったその分を、この山間に孤立した鉱山から浮すことを考えた。
坑夫の門鑑出入がやかましいのは、Mの狡猾な政策から来ていた。
しかし、いくらやかましく云っても、鉱山だけの生活に満足出来ない者が当然出て来る。その者は、夜ぬけをして都会へ出た。だが、彼等を待っているのは、頭をはねる親方が、稼ぎを捲き上げてしまう、工場の指定宿だった。うまいところがない。転々とする。持って行った一枚の着物まで叩き売ってしまう。そして再び帰って来た。
そういう者が、毎年二人や三人はあった。井村も流行唄をはやらした一人になった。そういう者が、新しい知識や、新しい話を持って来た。
女房が選鉱場のベルトに捲かれて、頭と腕をちぎられてしまった。それからヤケを起して方々をとびまわった。武松はO鉱山で普通一ン日三円から四円出している。それを見てきた。彼等は、自分達との差が、あまりにひどいのに眼を丸くした。
「KやAにゃ、すげえ奴が居るぞ。」
武松は、この鉱山ではすごい方だった。その彼が、たまげた話し方をした。
「役員なんぞ、糞喰えだ。いけすかねえ野郎は、かまうこた
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