も、掘り拡げても、なお、そのさきに、黄銅鉱がきら/\光っていた。経験から、これゃ、巨大な鉱石の大塊に出会《でっくわ》したのだと感じた。と、畜生! 井村は、土を持って来て、こいつを埋めかくしてやろうと思った。いくら上鉱を掘り出したって、何も、自分の得にゃならんのだ。たゞ丸の内に聳えているMのビルディング――彼はそのビルディングを見てきていた――を肥やしてやるばっかしだ。この山の中の真ッ暗の土の底で彼等が働いている。彼等が上鉱を掘り出す程、肥って行くのは、自動車を乗りまわしたり、ゴルフに夢中になっているMの一族だ。畜生! せめてもの腹癒せに、鉱石をかくしてやりたかった。
 女達は、彼の背後で、ガッタン/\鉱車《トロ》へ鉱石を放りこんでいた。随分遠くケージから離れて来たもんだ。普通なら、こゝらへんで掘りやめてもいゝところだ。喋べくりながら合品《カッチャ》を使っていた女達が、不意につゝましげに黙りこんだ。井村は闇の中をうしろへ振りかえった。白服の、課長の眼鏡が、カンテラにキラ/\反射していた。
「どうだい、どういうとこを掘っとるか?」
 採鉱成績について、それが自分の成績にも関係するので、抜目
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