豚群
黒島伝治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)牝豚《めぶた》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)えゝ※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)にや/\しながら
−−
一
牝豚《めぶた》は、紅く爛《ただ》れた腹を汚れた床板の上に引きずりながら息苦しそうにのろのろ歩いていた。暫く歩き、餌を食うとさも疲れたように、麦藁《むぎわら》を短く切った敷藁の上に行って横たわった。腹はぶってりふくれている。時々、その中で仔が動いているのが外から分る。だいぶ沢山仔を持っていそうだ。健二はじっと柵にもたれてそれを見ながら、こういうやつを野に追い放っても大丈夫かな、とそんなことを考えていた。溝《どぶ》にでも落ると石崖の角で腹が破れるだろう。そういうことになると、家の方で困るんだが……。
問題が解決するまで、これからなお一年かゝるか二年かゝるか分らないが、それまでともかく豚で生計を立てねば
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