ることや、五年前の除幕式には東京からえらい人が見えたことやをこまごまと話つづけた。
 なんで身投げなどしたんじゃろかなと、女は自問し、この世がいやになったんでしょうかなと自答した。そして、この世がいやになるというようなことは、どんなに名のある人だったかは知らぬが、あさはかな人間のすることだというような顔をした。
 私は詩碑の表面に記された今までの世界が空白になって──という春月の気持よりも、この畑へあがって行く女に同感しながら丘を下った。[#地から1字上げ]─小豆島にて─



底本:「黒島傳治全集 第三巻」筑摩書房
   1970(昭和45)年8月30日第1刷発行
入力:Nana ohbe
校正:林 幸雄
2009年6月17日作成
青空文庫作成ファイル:
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