前哨
黒島伝治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)支那部落に屯《たむろ》していた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#さんずいに「兆」、第3水準1−86−67、213−5]

/\:二倍の繰り返し記号
(例)あしこの沼のところでノコ/\やって居るぞ。
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」

×:伏せ字
(例)相手が×間でなく
−−

    一 豚

 毛の黒い豚の群が、ゴミの溜った沼地を剛い鼻の先で掘りかえしていた。
 浜田たちの中隊は、※[#さんずいに「兆」、第3水準1−86−67、213−5]昂鉄道の沿線から、約一里半距った支那部落に屯《たむろ》していた。十一月の初めである。奉天を出発した時は、まだ、満洲の平原に青い草が見えていた。それが今は、何一ツ残らず、すべてが枯色だ。
 黒龍江軍の前哨部隊は、だゝッぴろい曠野と丘陵の向うからこちらの様子を伺っていた。こちらも、攻撃の時期と口実をねらって相手を睨みつゞけた。
 十一月十八日、その彼等の部隊は、東
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