……」と云う。それでも分らないことがある。
 聴衆の中には、一坪の田畑も所有しない純小作人もある。が、五段歩ほど田を持っている自作農もいる。又、一反歩ほど持っている者もいる。そこで「吾々貧乏人は……」と云われても、五反歩の自作農は、自分にはあまり関係していないことを喋っているように思ったりするのである。
 話は、十分に砕いて、百姓によく分るように、百姓の身に直接響いて行くように、工夫しなければならない。徒に、むつかしい文句をひねりまわしたところで、何等役に立つものではない。
 何故、俺等は貧乏するか。
 どうすれば貧乏から解放されるか。
 それを十分具体的にのみこませた上でなければ、百姓は立ち上って来ないのである。

   無産政党

 いまだに、無産政党とか、労農党とかいうと危険な理窟ばかりを並べたて、遊んで食って行く不良分子の集りとでも思っている百姓がだいぶある。
 彼等には、既成政党とか、無産政党とか、云ったゞけでは、それがどういうものであるか分らない。政友会とか、憲政会とか云えば彼等には分る。だが、既成と、無産になると一寸分りにくい。
 社会主義と云えば、彼等は、毛虫のように思
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