もないことはない。しかし、大部分の百姓に、それがまだ分っていない。
俺達は、何故貧乏するか。
どうすれば、俺達は、貧乏から解放されるか。
この二つを百姓に十分了解させることが、なによりも必要だ。それが分れば、彼等は誰れに一票を投ずべきかを、ひとりでゞ自覚するのである。
演説会
民政派の演説会には、必ず、政友会の悪口を並べる。政友会の演説会には、反対に民政党の悪口をたゝく。そういう時には、片岡直温のヘマ[#「ヘマ」に傍点]振りまで引っぱり出して猛烈に攻撃する。
演説会とは、反対派攻撃会である。
そこへ行くと、無産政党の演説会は、たいていどの演説会でも、既成政党を攻撃はするが、その外、自分の党は何をするか、を必ず説く。そこは、徹頭徹尾、攻撃に終始する既成政党の演説会に比して、よほど整い、つじつまが会っている。
しかし、演説の言葉、形式が、百姓には、どうも難解である。研究会で、理論闘争をやるほどのものではないにしろ、なお、その臭味がある。そこで、百姓は、十分その意味を了解することが出来ない。
「吾々、無産階級は……」と云う。既に、それが、一寸難解である。「我々貧乏人は
前へ
次へ
全7ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング