窃む女
黒島傳治

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)流行《はや》っている。

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|束《わ》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)良《よ》っちゃん[#「っちゃん」に傍点]は

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぶら/\
−−

      一

 子供が一人ぐらいの時はまだいゝが、二人三人となると、育てるのがなかなか容易でない。子供のほしがるものは親として出来るだけ与えたい。お菓子、おもちゃ、帽子、三輪車――この頃は田舎でも三輪車が流行《はや》っている。女の子供は、少し大きくなると着物に好みが出来てくる。一ツ身や、四ツ身を着ている頃はまだいゝ。しかし四ツ身から本身に変る時には、拵《こしら》えてやっても、拵えてやってもなお子供は要求する。彼女達は絶えず生長しているのである。生長するに従って、その眼も、慾望も変化し進歩しているのだ。
 清吉は三人の子供を持っていた。三人目は男子だったが、上の二人は女だった。長女は既に十四になっている。
 夫婦揃って
次へ
全20ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング