りを見ておこったり、不平を云ったり、にや/\笑ったりして、陰鬱な面をしているだろう。かげでぶつ/\云っていず、自分からさきに出て、喋くりもし、みえを切ったり、華々しく腕を振りまわしたりやってみればいゝのだ。誰もさまたげやしない。ところが、彼自身でやる段になると、そういうことは皆目よくしない。そんなコツをさえもよう会得しない。そのくせ、人の醜悪面を見ては不公平だの、キタないのと云ってこぼして居るのだ。こんな奴は田舎へ行って百姓でもして居る方が柄に合っているのだ。──百姓をすると又、地子が高いの、取った米の値が安すぎるのとブツ/\こぼすであろう。
蛇の皮をはいだり、蛙を踏みつぶして、腹ワタを出したりするのは、一向、平気なものだ。一体百姓は、そんなことは平気でやる。、それくらいの惨酷さは、いくらでも持合わしている。小説の中でなら、百人くらいの人間は殺して居るだろう。人を殺すことや、怪我をさすことはなか/\好きな男である。
一体、プロレタリア作家は、誰でも人を殺したり、手や足をもぎ取ることが好きである。彼も、その一人である。まるで、人を殺さなければ小説が出来ないものゝように、百姓も殺せば、
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