子供も殺す。パルチザンでも、朝鮮人でも、日本人でも、誰でも、かれでも殺してよろこんで居る。「橇」とか「パルチザン・ウォルコフ」などを見れば、これはすぐうなずける。彼は又、「二銭銅貨」では子供を殺している。彼の殺し方は、なか/\むごたらしい。「穴」の中の、朝鮮の老人などがその一つの例である。──あんなにまでして殺さなくてもよかりそうなものだ。小説の種は、人を殺すことだけにあるのではない。彼がブツ/\云うことも、彼が人の醜悪面ばかりを見ることも、書けば小説になるのだ。しかし、彼はもっと冷酷に、どんなにひどいことでも平気でそれを見つめて居れるようになりたいと云っている。それがリアリストというもんかな? 彼には、人の悪い、鷹のようなところがある。自分では理由をつけて俺等は、多くの屍をふみ越して、その向うへ進んで行かなければならない。同志の屍を踏みこして。それから敵の屍をふみこして、と。だが、彼が云うようなことはあてになったもんじゃない。
彼は、勉強家でもない。律儀な、几帳面な男でもない。克明に見えるが、それは、彼の小心さから来ている。彼は、いろ/\なものをこしらえるのが好きである。舟をこしら
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