食べようという技巧がそこで工夫されだした。
 まず、食事たびごとに飯をたいてみた。なにしろ、外米はつめたくなると一そうパラつくのである。
 前夜から洗っておいて、水加減を多くし、トロ火でやわらかくそしてふきこぼれないようにたいてみた。
 小豆飯にたいてみた。
 食塩をいれていく分味をつけてみた。
 寒天をいれて、ねばりをつけた。
 片栗をいれてねばりをつけた。
 内地米と外米の五分五分の混合、あるいは六分四分の混合に平麦を加えるとどうもばらつきようがひどいので糯米《もちごめ》を二分ほど加えてみた。
 平麦のかわりに丸麦を二度たきとして、ねりつぶしてねばりをつけた。
 黄粉をまぶして食ってみた。
 数えているとまだあるだろうが、いろ/\な食べ方が一カ月ばかりのうちに、附近の人々によってかくの如く考え出された。
 平生、内地米のありがたさには気づかずに食っていたのだが『食』は、『衣』『住』と共に、人間が生きて行く上に最も重大なことなので、まずいとなると、それに対する対策は、なか/\真剣でいくらも智恵が働きそうに思われる。
 一週間ばかり外米混入の飯を食いつづけた後、一日だけまぜものなしの内
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