外米と農民
黒島傳治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)搗《つ》きに
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しゅん[#「しゅん」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)パラ/\して
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隣家のS女は、彼女の生れた昨年の旱魃にも深い貯水池のおかげで例年のように収穫があった村へ、お米の買出しに出かけた。行きしなに、誰れでも外米は食いたくないんだから今度買ってきたら分けあって食べましょうと云って乗合バスに乗った。近所の者は分けて呉れることゝ心待ちに待っていたが、四五日しても挨拶がない。買って来たのは玄米らしく、精米所へ搗《つ》きに出しているのが目につく。ある一人の女が婉曲に、自分もその村へ買い出しに行こうと思うが売って呉れるだろうかとS女にたずねてみた。農家は米は持っているのだが、今年の稲が穂に出て確かにとれる見込みがつくまで手離さないという返事である。なにしろ田地持ちが外米を買って露命をつながなければならないようなことはまことに「はなし」ならぬ話である。
昨年、私たちの地方では、水なし
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