ても内地米が目標となる。
 こんなのは、昨年の旱魃にいためつけられた地方だけかと思っていたら、食糧の供給を常に農村に仰がなければならない都会では、もっとすさまじいらしい。農村よりはよほどうまいものを食いなれている都会人には、恐らく外米は、痛くこたえることだろう。が、そこにもまた、いろいろな手段がとられていて、先日東京から来たある友達の話によると、外米の入っていない県にいる親戚に頼んだり、女中さんの田舎へ云ってやったりして、送ってもらっている者がだいぶあるとか。旱魃を免れた県には、米穀県外移出禁止というような城壁が築かれてはいるが、表門は閉っていても、裏のくゞり戸があいているので、四斗俵ならぬ三斗五升いりの袋ならその門を通過させてもらえるのだと笑っていた。
 この頃好景気のある船会社の船長の細君は、外米は鶏の餌に呉れてやっている、これは最も簡単な方法だが誰れにでも出来る方法ではない。新潟では米を家畜の飼料にしたというが、勿体ない話だが、新潟の農民が自分の田で作った米と、私の地方の農民が、金を出して買った外米とは同一に談じられないのである。船長の細君でゝもない限り、なんとかして外米をうまく
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