。ぺーチカの中で、白樺の皮が、火にパチパチはぜった。彼も入口へやって来た。
「コーリヤ。」
 松木が云った。
「何?」
 コーリヤは眼が鈴のように丸くって大きく、常にくるくる動めいている、そして顔にどっか尖《とが》ったところのある少年だった。
「ガーリヤはいるかね?」
「いるよ。」
「どうしてるんだ。」
「用をしてる。」
 コーリヤは、その場で、汁につかったパン切れをむしゃむしゃ頬張っていた。
ほかの子供達も、或はパンを、或は汁づけの飯を手に掴《つか》んでむしゃむしゃ食っていた。
「うまいかい?」
「うむ。」
「つめたいだろう。」
 彼等は、残飯桶の最後の一粒まで洗面器に拾いこむと、それを脇にかかえて、家の方へ雪の丘を馳《は》せ登《のぼ》った。
「有がとう。」
「有がとう。」
「有がとう。」
 子供達の外套や、袴《はかま》の裾が風にひらひらひるがえった。
 三人は、炊事場の入口からそれを見送っていた。
 彼等の細くって長い脚は、強いバネのように、勢いよくぴんぴん雪を蹴って、丘を登っていた。
「ナーシヤ!」
「リーザ!」
 武石と吉永とが呼んだ。
「なアに?」
 丘の上から答えた。
 子
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