がってついてきた。けれども、それも、大隊長の内心の幸福を妨げなかった。
「ユフカは、たしかに司令官閣下の命令通り、パルチザンばかりの巣窟でありました――そう云います。」
活溌な伝令が、出かける前、命令を復唱した、小気味のよい声を隊長は思い出していた。
「うむ、そうだ。」彼は肯《うなず》いて見せたのだった。「それを一人も残らず殲滅してしまった。我軍の戦術もよかったし、将卒も勇敢に奮闘した。これで西伯利亜《シベリア》のパルチザンの種も尽きるでありましょう。と、ね。」
「はい。――若《も》し、我軍の損傷は? ときかれましたら、三人の軽傷があったばかりであります。その中、一人は、非常に勇敢に闘った優秀な将校でありました。と云います。」
「うむ、そうだ、よろしッ!」その時の、自分の声が、朗らかにすき通って、いい響きを持っていたのを大隊長は満足に思った。
――今持っている旭日章《きょくじつしょう》のほかに、彼は年金のついている金鵄勲章を貰うことになる。俸給以外に、三百円か五百円、遊んでいても金が這入ってくることになるのだ。――功四級だろうか、それとも五級かな。四級だと五百円だ。それから勲功によ
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