パルチザン・ウォルコフ
黒島伝治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)牛乳色《ちちいろ》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四五露里|距《へだた》っている
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)日本の兵たい[#「たい」に傍点]がやられました。
×:伏せ字
(例)また××の犬どもがやって来やがったか。
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一
牛乳色《ちちいろ》の靄《もや》が山の麓《ふもと》へ流れ集りだした。
小屋から出た鵝《がちょう》が、があがあ鳴きながら、河ふちへ這って行く。牛の群は吼《ほ》えずに、荒々しく丘の道を下った。汚れたプラトオクに頭をくるんだ女が鞭を振り上げてあとからそれを追って行く。ユフカ村は、今、ようよう晨《あした》の眠りからさめたばかりだった。
森の樹枝を騒がして、せわしい馬蹄の音がひびいてきた。蹄鉄に蹴られた礫《こいし》が白樺《しらかば》の幹にぶつかる。馬はすぐ森を駈けぬけて、丘に現れた。それには羊皮の帽子をかむり、弾丸《たま》のケースをさした帯皮を両肩からはすかいに十文字にかけた男が乗っていた。
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