、この針小棒大な報告を喜んだ。彼等は、パルチザンには、手が三本ついているように、はっきりほかの人間と見分けがつくことを望んでいたのだ。
大隊長は、そのパルチザンの巣窟を、掃除することを司令官から命じられていた。
「……しかし、ここには、パルチザンばかりでなしに、おとなしい、いい百姓も住んどるらしいんです。」
通訳は攻撃命令を発する際に、村の住民の性質を説明してこう云った。通訳は、内気な初心《うぶ》い男だった。彼はいい百姓が住んどるんです、とはっきり、云い切ることが出来なかった。大隊長は、ここがユフカで、過激派がいることだけを耳にとめた。それ以外、彼れにとって必要でない説明は一切、きき流してしまった。
過激派討伐を命ぜられた限り、出来るだけ派手な方法を以て、そこらへんにいる、それに類した者をも鏖《みなごろし》にしなければならない。こういう場合、派手というのは、残酷の同意語であった。不明瞭な点を残さず、悉《ことごと》くそれを赤ときめて、一掃してしまえば功績も一層|水際《みずぎわ》立って司令部に認められる。
大隊長は、そのへんのこつをよくのみこんでいた。彼は先《ま》ず武器を押収するこ
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